資産管理会社を検討してみた

年末に日本に一時帰国をすることになり、いい機会なので資産管理会社を検討してみました。結論としては、法改正により非居住者でも会社設立は可能になったが、非居住者が代表の法人の場合、法人口座の開設が無理そうというものでした。

代表者を親に頼むとか考えたのですが、実質的支配者申告書により出資者の中に非居住者がいることがわかる上、米国在住ということでFATCAの対象としてどのような情報がIRSに行くのかも不明です。

さらに資産管理会社の代表者を合意の上とはいえ親に頼むのも違う気がして諦めました。

 

ただ、日本に帰った際には資産管理会社を活用したいと思っているので、いろいろなポイントをまとめてみたいと思います。

金融取引

・FX取引

法人でFXをするメリットは、レバレッジを増やせることでしょう。トラリピのマネースクエアの場合、個人:4%(25倍)、法人だと1.5%前後(65倍くらい)と全く違います。これは必要証拠金額、ロスカット水準に関わってきますので、大きいです。

さらに、役員給与などを費用として計上できることでしょう。

その代わり、個人であれば申告分離課税で20%のところ法人の税率は31%+70,000円となります。

また、損益認識の方法が異なります。法人の場合、年度末の未決済ポジションの含み損益を含める必要があります。ただ、これはトラリピをメインでやる場合はメリットではないかと思っています。というのも、トラリピではポジションは常に含み損を抱えるのが通常であるため、その年度の確定益と含み損を相殺できるはずです。

・株式取引

キャピタルゲインについては、個人であればどれだけ稼いでも申告分離課税の20%ですので、法人で売買するメリットはありません。

配当金については、受取配当金の益金不算入で20%を収入から控除することができます。つまり80%に31%の税率が掛かるので、その他に経費が掛からないとすると24%が税率ということになります。一方で、個人は所得税は総合課税で配当控除を利用、住民税は申告分離課税が選択できるので、住民税の5%のみにすることができます。

これを考えるとあまり税務上のメリットはないように思えます。

法人の経費は、トラリピの収入を相殺するために使った方がいいでしょう。

自宅マンション

自宅マンションを法人名義で購入した上で社宅として居住すると、管理費や修繕費の支払いなどの支出を経費にできるほか、減価償却費も計上することができます。個人で購入する場合は住宅ローンが利用できることが最大のメリットですが、会社員を辞めた後に購入する場合はこのメリットは享受することはできません。

住宅ローンを組もうとすると、会社員である間に購入することになり、その後退職するまでは空き家になるなどタイミングの問題がどうしても生じてきます。3500万円のマンションを頭金1割で住宅ローンを組んだ場合、3,150万円を投資に回せる代わりに総返済額が3900万円と増えます。

さらに、法人名義で一括購入した場合は、管理費や減価償却費を経費に計上できますので、管理費が3万円×12か月×35年=1,260万円、保険や税金が年15万円×35年=525円、減価償却費が建物分で半分として1,750万円、合計3,535万円。法人税率31%を掛けて35年で約1,100万円の節税効果があります。

ということで、以下の比較が成り立ちます。

  ・住宅ローン:総支払額3,900万円ー3,150万円からの運用収益

  ・法人名義一括購入:3,500万円-1,100万円=2,400万円

つまり、3,150万円からの35年間の運用収入が1,500万円を超えるのであれば住宅ローンの方がいいということになります。但し、3,150万円から年間110万円の住宅ローンを返済する必要があるので、運用できる元本は年々減っていきます。

経費計上

・役員報酬

個人に役員報酬を支払った後の個人所得が住民税非課税枠以内になっているようにするのがポイントだと考えています。まず、配偶者から考えると住民税非課税計算上の控除対象配偶者となるため給与所得控除後の所得が48万円以下となる必要があり、給与所得控除が55万円であるため103万円以下が最適な報酬額となります。

世帯主については、配偶者+子供2人の場合、給与所得控除後171万円以下が必要であり、給与所得控除55万円を加えた226万円以下が最適な報酬額となります。

さらに、配偶者を103万円以下にすることで年金第3号被保険者、健康保険の被扶養者となり、世帯主の報酬226万円に対する厚生年金保険料、健康組合保険料のみの支払いで、配偶者の国民年金、健康保険、子供の健康保険がカバーできます。

・社宅使用上の注意

法人名義マンションを社宅として使う場合は、従業員から社宅利用料を徴収し法人は雑収入として計上する必要があります。社宅利用料の計算式も決められており、マンションの場合は床面積によって以下の通りとなります。

  ・共用部持分も併せて99m2以下 

   (1)【その年度の建物の固定資産税の課税標準額】×0.2%

   (2)12円×【その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡】

   (3)【その年度の敷地の固定資産税の課税標準額】×0.22%

   (1)+(2)+(3)が賃料相当額

  ・それ以外で法人所有の場合

   (イ)【その年度の建物の固定資産税の課税標準額】×10%

   (ロ)【その年度の敷地の固定資産税の課税標準額】×6%

   (イ)+(ロ)の1/12が1カ月の賃料相当額となります。

・その他経費

自宅を事務所としている場合は、事務所面積相当分の家賃、水道光熱費、通信料などが経費として認められます。ただ、資産管理法人のみの場合は厳しいかもしれません。

事業に関係するセミナー代や書籍代も経費として認められます。資産管理法人であれば、こちらは幅広く経費にできそうです。法人で所有する会社の株主総会に出席するといって、交通費と宿泊代も経費にできそうですね。

事業内容に食品を加えたら、スーパーなどでの食品購入費もある程度経費計上できる気がします。

よく福利厚生費として社員旅行などの名目で旅費を経費にできるという話がありますが、社員が家族のみの場合はこれは無理なようです。

積立て

・小規模共済

MAX月70,000円を積立てることができます。65歳以上であれば任意解約でも退職所得となるため、退職金控除枠内であれば無税で手元に残すことができます。また、年利1.5%で掛け金総額もしくは2,000万円限度で借入も可能です。

ただし、毎月の掛け金は法人の損金とはならず個人の所得から控除されます。役員報酬のところで述べましたが、住民税非課税とするために役員報酬を抑えた場合、基礎控除48万円、配偶者控除38万円、社会保険料を除き、配当控除まで使用するとほとんど控除する所得が残りません。そのため、使わないかなと思っています。

・経営セーフティ共済

掛金月額5,000円~20万円で、800万円まで積立てることができます。40ヵ月以上で自己都合解約でも全額戻り、資金が必要な時は、年利0.9%で掛金総額もしくは800万限度で借入も可能です。さらに素晴らしいのが、これは法人の損金とすることができ前払い制度もあります。つまり、年度末に利益が出すぎた場合は、翌年分を一括して前払いすることで柔軟に経費を増やすことができます。

ただし、解約時は一括で受取しかできず、さらにその受取金は収益として認識する必要があります。なので、税金の繰延効果があるということですね。もしくは一時的な損失が計上できるときに受け取るなどの方法があります。損金になるといっても受取時に課税されること、キャッシュとして出ていくことから資産管理法人として投資をしていく場合は、自分で運用していった方がいいかもしれません。

資産管理法人設立タイミング

個人で保有する株式やFXを法人に移すことはできません。正確には現物出資という方法もありますが、税務上のメリットはありません。そのため、法人設立後、個人所有の金融資産を売って現金化する都度、法人に貸し付け再投資は法人で行うというのが一番いい方法になります。

私は、トラリピは法人口座、自宅マンションは個人名義で住宅ローン利用でも法人名義での購入でもOK(退職とマンションが見つかるタイミングによる)、株式は個人名義という形を考えています。

さらに、FPとして活動するつもりですので併せてこの法人でFPを運営していくことになります。

まあ、すべては帰国後なんですけどね。