退職後の配当金の実効税率の考察 その2
さて、前回の記事では所得を国内配当所得に限った場合のケースを検討してきました。しかし、現時点での私の状況は米国株への投資も検討していますし、不動産賃貸収入もあります。ということで、前回のケースに外国株式配当所得、不動産賃貸収入を加味して検討してみることにします。
外国株式配当所得
外国株式からの配当所得には、以下の特徴があります。
- 現地で課税される源泉徴収税。(米国の場合10%)
- 日本での課税。(特定口座源泉徴収ありの場合は、20.315%が源泉徴収)
- 配当控除が使用不可
- 現地源泉徴収税の二重課税を防ぐための外国税額控除(但し10%全部は戻ってこない)
外国税額控除
さて、実際の計算をしてみる前に外国税額控除についてです。
外国税額控除は、現地で引かれる源泉徴収税を取り戻す制度です。但し、以下の2点に気を付ける必要があります。
- 配当控除後の所得税以上は戻ってこない
- 控除限度額がある。
1番目については、配当控除後の所得税額が3万円の場合、現地で10万円源泉徴収されていたとしても、3万円までしか戻ってこないということです。
2番目については、上記の源泉徴収額10万円の例だと、その年分の所得税の額×(その年分の調整国外所得金額/その年分の所得総額)で計算した額が10万円以下の場合、この計算した金額までしか外国税額控除として使えないということです。
2番目を具体的に言うと、計算後の所得税額が10万円、源泉徴収額が10万円、外国配当所得が100万円、外国配当所得も含めた総所得が500万円の場合、外国税額控除として使える額は以下の計算式になるということです。
10万円×(100万円/500万円)=2万円
つまり源泉徴収額が10万円で、所得税額も10万円なのに、外国税額控除は2万円しか使えないため最終の所得税額は10万円(所得税)-2万円(外国税額控除)+10万円(源泉徴収額)=18万円となります。
計算表
さてここまでの前提をもとに、シュミレーションをしてみました。
1 不動産収入なし、外国株配当所得100万円のケースと0円で国内株配当所得のみのケース
No2が国内株のみの時に所得税が0%となる上限で約700万円となります。一方で、No3は外国株配当が100万円ある時の、所得税が0%となるケースです。
総所得額をみると、No1とNo3、No2とNo4が同じで比較ができるようになっていることがわかります。
No1とNo3の差は外国源泉徴収額10万円。No2とNo4の差は外国源泉徴収額10万円、所得税88千円で188千円ほどになります。
この差を配当利回りのアップで埋めようとすると、外国株配当は、No3は100万円ではなく115万円、No4は127万円が必要となります。つまり、配当利回り3%で100万円を得ていた場合、元本は3,333万円となるため、No3では3.5%、No4では3.8%の利回りが必要ということになります。
なお、実際は700万円も配当金を貰っている方はごく少数でしょうし、そのような方はこんな細かいことは気にしないと思います。
そこで毎月10万円の年間120万円のケースで考えてみます。日本株のみの場合は、税引後114万円の手取りとなり、日本株の配当利回りを3%とすると、必要資金は4,000万円となります。一方で、半分の60万円を日本株から、残りを米国株からとした場合、同じ4,000万円で同じ114万円を得るためには、米国株は3.4%の配当利回りが必要となります。
これらの結果を踏まえると、だいたい0.5%の超過利回りが米国株には求められることがわかります。
2 不動産収入あり、外国株配当所得100万円のケースと0円で国内株配当所得のみのケース
配当所得以外の収入があるケースがこちらです。不動産収入としていますが給与収入と読み替えても概ね構いません。見てわかる通り、所得税が0%となる上限額が下がっていることがわかります。これは、配当控除の額が少なくなっていることが原因となります。
税引後の手取り収入を同じにするために米国株に求められる超過利回りは、約0.5%と変わりませんでした。
この計算結果をもとに考えたこと
正直に言って、0.5%の超過利回りであれば大型株は米国株で運用しても十分にメリットがあると感じました。例えば、チョコレートなどのお菓子メーカーへの投資を考えた時、日本の明治ホールディングスとアメリカのHSYを比較するとします。現時点で明治は1.73%、HSYは2.89%の配当利回りとなっており、十分にペイできる超過利回りを得ることができ、投資に値すると感じました。