米国居住者がネスレ株を買った場合の配当源泉徴収

先日のブログの購入予定米国株一覧にネスレを入れました。最近のネスレは医療ヘルスケアへの投資が活発で、食品メーカー+医療ヘルスケアメーカーとしてのポテンシャルを持った優良株で、しかも配当利回りも高いという是非ともほしい株でした。

 

だけど。。。ネスレはスイス企業としてスイスの税法の影響を受けます。米国居住者(日本居住者も同じです)として、海外に本社を持つ企業の配当金を受けるときは現地での源泉徴収課税をどのように取り戻すのかという課題があります。

スイスの源泉徴収課税

なんとスイスでは35%もの源泉徴収課税が掛けられ、これは世界で見ても最も高い国の一つとなります。ちなみに、アメリカは配当金の源泉徴収はなく確定申告で収入の一つとして申告、累進課税の適用となります。

参考に他の国は、以下の通りです。

  • Australia: 30%
  • Canada: 25% (15% effective rate for Americans due to tax treaty)
  • China (mainland): 10%
  • France: 30%
  • Germany: 25%
  • India: 0%
  • Ireland: 20%
  • Italy: 26%
  • Japan: 20%
  • Mexico: 10%
  • Netherlands: 15% (falling to zero starting in 2020)
  • Russia: 15%
  • Saudi Arabia: 5%
  • Spain: 19%
  • Switzerland: 35%
  • Taiwan: 21%
  • U.K.: 0% (20% for REITs)

アメリカとスイスの租税条約

ただし、各国は相互に租税条約を結んでおり、アメリカとスイスは15%が配当金にかかる源泉徴収税としてなっています。そのため、20%は還付されるのですがこの手続きが複雑です。証券会社経由でスイスの税務当局に書類を出す必要があるとのこと。アメリカの証券会社では、JPMorganやMorgan Stanleyなどの大手であれば自動でこの手続きをやってくれるそうですが、ほとんどの証券会社(FidelityやVanguardであっても)はglobal custodianを使って外国証券を管理しており、この複雑な手続きをやってくれないそうです。

アメリカでの確定申告

さて、上記の租税条約上の手続きをやってくれる場合は15%、ダメな場合は35%が課税されて手元に残ります。一方で、米国居住者として、この外国株の配当所得に対して米国の所得税の課税を受けます。この二重課税を防ぐために、源泉徴収で課税された15%もしくは35%分を、課税額から控除することができます。Tax Creditといいます。

Tax Creditの問題

このTax Creditですが、いくつか問題があり、その一つは別のフォームを提出する必要があり計算がめんどくさいというものです。もう一つのデメリットとしては、課税額以上には控除できないということです。どういうことかというと、現地で10,000ドル源泉徴収されているとして、アメリカでの確定申告後の課税額が10,000ドル以上ないと全額控除できません。まあ、外国株の資産規模からいって個々の問題はあまりなさそうですが。

結論

ということで、今、ネスレを買ったとすると、確実に現地で35%が課税されるうえに、アメリカでの外国税額控除の確定申告のやり方がよくわかりません。確定申告は会社経由で税理士に頼むため相談してやればできないことはないかと思いますが、ここであまり目立つことをしたくないという問題もあります。

ネスレを買うのは断念した方がよさそうです。

一方で、BTIはイギリスで現地源泉徴収が0%なので、このような問題は起きません。

 

さて、この理屈は日本に帰った後も同じようです。そもそも、日本のネット証券では今はネスレの取り扱いはありませんが、今後ネスレが加わったとしても、上記の租税条約上の手続きを証券会社がやってくれない限り、35%とられてしまいます。外国税額控除を使えばいいのかもしれませんが、問題は同じで十分な課税額がないと返ってきません。

 

かなり厳しいですね。

ちなみに、上記の情報は、このサイトを参考にしたのですが、結論は、外国企業を買ってポートフォリオの多様化や世界全体の経済成長の恩恵を受けたいのであれば、米国のインターナショナルカンパニーを買えばいいじゃないかという身も蓋もない結論となっていました。