日経平均予想EPS前年比から見る直近の戦略

 個別株をやるうえで、マクロデータ等からキャッシュポジションを増やしたり減らしたりはせずに常にフルインベストメントが基本的な戦略になります。もちろん、暴落の手前で持ち株を売ってキャッシュを作り、暴落後に買い直しができたら最高ですが、そんなことはできません。そうすると、暴落を回避するよりも、時々ある急激な市場の上昇に乗り遅れる方がダメージがでかいと判断しているためです。

 正確なデータは忘れてしまいましたが、S&Pの過去データでは市場が最も上昇した数日を逃すと全体リターンが著しく下がるそうです。キャッシュポジションの変更をしたうえで、この数日を逃さないようにするというのは自分にはできないという判断です。

新規資金の投入タイミングと有名なデータ 

 一方で、現在は会社員であり給与収入からの余剰資金を株式投資に回しています。ということは新規投資用資金をいつ市場に投入するかという問題があります。前段の理屈で言うならば、すぐに投入すべきです。

 ですが、新規キャッシュの買いタイミングはできるだけ市場が暴落した時に一気に買いたいという誘惑には今のところ勝てていません。ただ、暴落の底を判断するのはすごく難しいというのが、これまでの実感です。需給を判断する様々なデータ(騰落レシオ、新安値銘柄数、信用評価損益率、裁定買い残高推移)は、過去の例えばリーマンショッククラスまで落ち込むまで待っていたら、機能します。但し、そこまで落ち込むのはそれこそ数年、もしくは10年に一度であり、これを待っていたら逆に市場の上昇を逃してしまいます。その時点の暴落の底では買えるけど1年~2年前に買っても同じ水準ということです。

 一方で、これらのデータの基準を甘くすると、本当の暴落の時には役に立たず中途半端な暴落の水準で買ってしまい、その後の本当の暴落時には指を咥えて見ているしかなくなってしまいます。

 ということで、最近は新規購入資金についても、適宜、買いたい銘柄が買いたいバリュエーションで売られていたら買うというのが正解な気がしています。

日経平均予想EPS前年比

 一方で、最近とある方のFacebookで面白いデータのとり方を知りました。それは、日経平均の予想EPSの前年比を調べるというものです。日経平均予想EPSの前年比ということは、日本の経営者たちの将来の見込みということになりこれが落ち込んでくると将来に対して弱気な見込みをする経営者が増えてきたということになります。

 実際にデータを取れる2004年10月からのグラフを作ってみるとこんな感じになります。

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日経平均予想EPS前年比の使い方 

赤線が日経平均予想EPS前年比、青線が日経平均となります。リーマンショック前は2007年12月ごろから予想EPS前年比が下がってきていることがわかります。リーマンショック前後が異常値となってしまっていますが、日経平均が上がり始めた2013年の少し前から予想EPS前年比も上を向き始めました。

 さらに、2016年の株価の低迷時には、2015年末から予想EPS前年比が下がり始め、下げが止まって横ばいになった少し後で日経平均も上昇し始めています。2018年については、4月ごろから下がり始めているのがわかります。

 大きな変動なのでたくさんのサンプルはありませんが、傾向としては予想EPS前年比が下がり始めたらそれ以上の株価の上昇は見込めない。予想EPS前年比が下げ止まったら、株価も上昇に向かう。ということが読み取れます。

 これは、論理的に考えてもわかりやすく、予想EPS前年比が下がる=多くの企業で翌年業績見込みが前年を下回る、予想EPS前年比が下げ止まる=翌年業績見込みが前年を下回ることがなくなる(業績の回復傾向が見えてくる)ということになります。

 本当は、各業界を代表する企業の四半期決算短信を常に追いかけ業績の変動をみることで、この流れがつかめると思うのですが専業でもない限りなかなかその時間はありません。日経平均予想EPS前年比というのは、この代わりになるものだと感じました。

日経平均予想EPS前年比から見る直近の戦略

 ということで、直近の戦略ですが予想EPS前年比が下げ止まっていません。過去のサンプルからするとこれが下げ止まってから買いに回っても十分に日経平均の上昇に間に合います。これから新規資金の投入を考える場合は、もう少し待ってみてもいいかもしれません。

S&P500の予想EPS前年比

米国株をやっている身としたら、こちらの方が気になるので調べてみました。日経平均のような日次データには辿り着けなかったのですが、JPMのこちらのサイトで四半期ごとのEPS前年同期比を見つけることができました。これによると2018年10月-12月期が14.8%と前四半期の27.9%から明らかに下がっており、2019年1月-3月期は-2.9%まで落ち込みます。その後、1.5%、2.5%と推移し、2019年10月-12月期でやっと8.5%となります。ということで、米国株についても急いで買い増しをせずに、半年くらいは様子を見てもいいかもしれません。少なくとも2019年4月-6月期の1.5%の回復が本当かを確かめてからでもいい気がします。