退職後の配当金の実効税率の考察

さて、他の多くの人同様に私もアーリーリタイア後は、日常生活費は配当金で賄いたい考えでいます。その際に問題になるのは税金です。前回の記事で外国税額控除の話に触れましたが、今回は外国税額控除の手前の日本株からの配当金の実効税率について考えてみたいと思います。

上場株式等に係る譲渡所得等・配当等の住民税課税方式の選択

2017年の税制改正で、上場株式の譲渡所得や配当所得について所得税と住民税で異なる課税方法が選択できることが明確化されました。まずこの制度を活用することが大前提になります。上場株式等の所得に関する住民税申告不要等申出書という書類を市町村に提出する必要があります。

この制度を活用することで、配当金の課税方法として所得税は総合課税、住民税は源泉分離税を選ぶことが可能になりました。

もともと、配当金は所得税15.315%、住民税5%が源泉徴収されます。一方で、総合課税制度の所得税は5%からの累進課税、住民税は10%となります。つまり、他の所得と合計して15.315%以下の区分に収まるのであれば、所得税は総合課税制度を使って課税計算した方がお得ということになります。

総合課税での所得税の計算方法

ここでは、シンプルにアーリーリタイア後で収入は日本株からの配当所得のみということで考えていきます。総合課税で計算するときは、源泉徴収前の配当金合計額がそのまま課税対象額になるのではなく、様々な所得控除と税額控除があります。ざっくり説明すると所得控除は、総所得金額からマイナスできる額、税額控除は課税額そのものからマイナスできる額となります。

所得控除

さて、前記の条件で使える所得控除を考えると以下の3点があります。

  • 基礎控除38万円
  • iDeco拠出金に対する控除(小規模企業共済等掛金控除 )81.6万円(6.8万円×12)
  • 社会保険料控除(国民年金)19万6080円

その他にも使えそうな控除として、健康保険料に対する控除、ふるさと納税の寄付金控除、医療費控除などがありますが、一律では計算できないためここでは省きます。

この3点を合計すると149万2千円となります。

課税所得

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さて課税所得は、配当所得から前段の所得控除を引いた金額がそれになり、上記の表に従って課税額が求められます。

つまり、税率5%以下に収まるためには195万円+149.2万円で344.2万円以下、10%は479.2万円以下というように計算することができ、課税額は逆に配当所得-総所得控除の金額を上記の表に当てはめて計算することができます。

配当控除

さて、ここで終わらないのが配当所得を総合課税にする際のメリットでして、配当所得には、総合課税を選択して確定申告をした場合に適用される税額控除があり、剰余金の配当には10%の配当控除があります。

ここでポイントなのは、これが税額控除だという点です。つまり、課税所得を計算しそこに上記の税率をかけた後の、課税額からこの控除額をマイナスできるのです。

例えば、先ほど配当所得344.2万円以下でかつ、上記4つの控除を使える場合には、課税所得は195万円以下となり税率5%のゾーンとなると説明しました。ここで配当所得344万円として考えてみましょう。

配当所得344万円-所得控除149万円=課税所得195万円×税率5%=課税額9.75万円となります。さらに配当控除が使えるため、344万円×10%=34.4万円が上記の課税額9.75万円からマイナスすることができ、課税額は0円となります。

つまり、総合課税を選択すると課税額は0円となり、344万円の配当所得に対して源泉徴収済15.315%の約53万円が全額還付されるということになります。

まとめ

ここまで見てきた通り、これだけの所得控除額があると、かなりの額の配当金収入の実効税率が0%となり、源泉徴収の住民税率5%のみとなります。

これが国内配当所得以外の収入、例えば外国株からの配当所得、不動産所得などがあると計算が少し複雑になります。

次回以降はそのケースを見ていきたいと思います。